業務効率化を実現するツールとして「RPA(Robotic Process Automation)」を導入する企業が増えている。本稿ではハードルが高いと思われがちなRPAツール導入の際に留意すべきポイントや、導入することによるメリット、活用シーンなどを紹介する。
いまなぜRPAを導入する企業が 増えているのか
RPAとは、これまで人が手作業で行ってきた作業をロボットが代行・自動化することにより、業務プロセスの処理にかかる時間を短縮し、業務効率を向上させるものだ。デスクトップ上で行うキーボードやマウスによる操作の手順、特定の条件による分岐をロボットに教えると、ロボットは教えられたとおりに自動実行する。ちなみにRPAのロボットは、形のある機械ではなくソフトウェアロボットであり、自動化アプリケーションの一種である。
RPAが注目され、導入事例が増えてきた背景の一つに、「働き方改革」がある。働き方改革は、生産労働人口が減少の一途をたどる日本社会において、労働生産性を向上させて長時間労働など人の負担を軽減することが目的だ。
ここ最近、特にRPAの導入が進んでいるのは、業務部門の現場主導により、短期間のうちに少ない投資で導入できることが大きな理由だ。業務を効率化するための新規システムを開発するには数カ月~数年単位もかかるが、RPAならばすぐに導入できる。新規システムの開発には多大な投資が必要になるため、費用対効果が見合わずにプロジェクトが消滅することもあったが、RPAは非常に安価。システム刷新に投資するのなら、RPAを使って延命・改善するという企業が増えているのだ。
当然のことながらRPAの国内市場は急速に伸長しており、2019年に行われたある調査によると、導入率は大手企業(年商1,000億円以上)では50%を超え、中堅・中小企業でも25%となっている。当初は金融業界や大手企業で導入が進んだRPAだったが、その効果が広く認識されたことで、中堅・中小企業へも導入が進んでいると考えられる。
中堅・中小企業におけるRPA導入のメリット
RPAのメリットは、これまで人が行ってきた定型業務をロボットに代行させることで生産性を向上させることにある。とはいえ、中堅・中小企業には大手企業のようにまとまった定型業務が少ないと考えがちだ。しかし、総務・経理系の業務を中心に、例えば複数のExcelのある項目を1つのシートにまとめて集計するといった単純作業や定型業務は数多く存在する。営業系業務にしても、顧客訪問の合間をぬって週次・月次の売上レポートの作成を行っているというケースもあるだろう。各担当者は、こうした定型業務をこなしながら本来の業務を行っているというのが実情だ。定型業務をRPAに代替えすることで、本来の業務に費やせる時間を増やしたり、残業時間を抑制したりすることが可能になる。
そもそも中堅・中小企業は、大手企業以上に人材不足が深刻な課題となっている。人がこれまで手作業で行ってきた単純作業や定型業務をRPAによって自動化できれば、作業時間を短縮し単純なミスも減少する。従業員は単純作業から解放されることで仕事へのモチベーションも高まり、離職率の抑制も期待できるだろう。こう考えると、大手企業よりむしろ中堅・中小企業でこそRPAは活用されるべきだろう。
2018年度版の中小企業白書においても、中小企業における労働人材不足への対応方法として、「業務プロセスの改善や工夫」(36.3%)、「IT導入、設備投資による省力化」(22.1%)が上位に挙げられている。また、「付加価値の向上及び先進的なIT利活用」の項では、先進的なIT利活用として、AI(人工知能)、ビッグデータ、IoTと並びRPAが取り上げられ、「より高度な作業を人間に代わって実施できる認知技術(ルールエンジン、AI、機械学習等)を活用した業務を代行・代替する取組」と紹介されている。
中小企業におけるRPA導入例
実際、通販業務における入力・転記作業を自動化したアイリンクス、年末調整の電子申告化を実現したとどろき会計事務所など、劇的に業務効率化を実現した中小企業の事例も登場してきている。
定型処理作業を自動化する RPAの活用シーン
ここで、RPAが中堅・中小企業のどのような業務で活用できるのかを具体的にみてみよう。RPAのロボットが最も得意とするのは「ルールと手順がしっかり決められた定型処理作業」だ。例えば、多くの企業では基幹業務システムの画面を開いて決まった項目の数字をコピー、またはファイルにエクスポートし、それを表計算ソフトのワークシートにペースト、またはインポートして集計・分析処理を行い、レポートに出力するという作業を行っている。こうしたルールと手順が決まった定型処理作業は単純だが、参照する基幹業務システムの数が増えるほど手間も時間もかかる。これをロボットで自動化すれば、業務プロセスの作業の手間を軽減し、所要時間も短縮できるわけだ。
RPAが特に威力を発揮するのは、膨大な量のデータを扱うような業務である。人手で操作している工数が多ければ多いほど、ロボットによる作業効率は高くなる。さらに人手による作業でありがちな、オペレーションミスによる誤入力を回避するのにも役に立つ。ルールと手順がしっかり決められた定型処理作業であれば、基本的にどんな業務プロセスにも適用できるのがRPAの魅力なのだ。
RPAの活用シーン例
膨大な量の見積もり作成
活用シーン別で課題解決例をご紹介
RPAツール導入における3つのポイント
ひとくちにRPAツールといっても、サーバ側で集中管理するタイプのRPAツールと、クライアントPCで完結するツールとに大別される。サーバ型は運用規模も大きく、当然のことながら開発に時間や費用もかかる。一方のクライアント型は、運用規模も比較的小規模で、RDA(Robotic Desktop Automation)と呼ばれることもある(本稿では、RDAも含めてRPAと記述する)。
いずれのタイプもそれぞれ特長があり、自動化したい業務に応じて、これらのツールを使い分けることになる。最近では、あまりコストをかけず、身近な業務から自動化し、より多くの従業員が恩恵を受けられるものも普及してきた。そういったRPAツールを選ぶときに留意すべきポイントを考えてみよう。
Point1 業務標準化のためにシステム化できるかどうか
RPAを導入する際には、自動化する業務を標準化しなければならない。RPAは、導入しただけで業務を自動化するような「魔法のツール」ではない。まずは業務そのものを標準化することが必要なのだ。
業務部門では、繰り返し実施する機械的な定型処理作業であるのにもかかわらず、ルールや手順をしっかり決めていないために属人化している業務プロセスが多い場合がある。人によって作業手順が違っていたり、業務効率に差があったりする場合には、RPAを導入しても自動化することは難しい。この課題を解決するには、まずルールや手順を棚卸ししてマニュアルに明文化する。その上でRPAを導入するのだが、標準化されていなかった業務の一部はシステム化する必要性も出てくる。
そこでRPAツールの選定時に考慮したいのが、RPAによる自動化だけでなく、業務の整理・見直しをいかにスムーズに進められるかという点だ。業務プロセスに変更を加えることなく自動化できるのもRPAの特徴ではあるが、必要に応じて業務をシステム化できるアプリケーションを開発できればさらに業務効率が向上するのは間違いない。
Point2 ユーザー自身が簡単に設定変更できるかどうか
二つ目の留意したいポイントは、ロボットに対する設定変更が容易なツールを選ぶという点だ。RPAのロボットが実行する作業は、連携する基幹業務システムやWebアプリケーション、Excelワークシート、メールの定型メッセージなどの更改に伴って頻繁に変更が発生する。
しかしながらRPAツールの中には、プログラミング言語を使ってコーディングしなければならないものもある。こうしたRPAツールを導入してしまうと、変更が発生するたびにSIベンダーやコンサルタント、特定のエンジニアに委託して設定変更を行ってもらう必要がある。これでは想定以上の維持コストがかかり、人手による作業よりも費用対効果に劣るという事態になりかねない。
そこで重要になるのが、難しい知識を必要とせず業務部門のユーザー自身がロボットを設定変更できるRPAツールを選ぶことだ。使いやすいか、簡単かというのは、実際に使うユーザーのスキルによって捉え方が変わってくるので、導入前にトライアルを実施することが望ましい。
Point3 費用対効果が高く、多くの従業員が恩恵を受けられるかどうか
三つ目の留意すべきポイントとして挙げたいのが、コストである。既存のRPAツールは、コンピュータ1台あたりの年間コストが100万円以上もかかるケースが多い。よくある定型処理作業を自動化したくても、コスト面から導入できないのだ。もちろん、業務部門単位あるいは中堅・中小企業にとっても敷居が高い。
こうしたRPAツールの課題を解決するために、最近は非常に低廉なコストで導入できる製品も登場している。製品選定の際には、自社が投資可能な範囲のコストかどうかを確認する必要がある。
3つのポイントを満たしたRPAツール「CELF」
上記の留意すべきポイントを満足させるRPAツールがある。それがSCSKの「CELF(セルフ) 」だ。
CELF RPAの特徴
CELFは、これまでMicrosoft Excelなどのオフィスアプリケーションを利用して業務部門が現場で個別に構築していた、いわゆるEUC(End User Computing)システムを開発するためのクラウドツールとして登場した。プログラミングの知識がなくても、Excelを使った経験があれば誰でも簡単に使いこなすことができる。作成したアプリケーションは、Excelのような操作性で使えるというツールだ。このCELFにはRPA機能がオプションで用意されており、上述した3つのポイントを満たしていることが大きな特徴だ。
Point1 システム化できるかどうか
Point1のシステム化できるかどうかについてCELFは標準化されていない業務プロセスをシステム化するためのアプリケーション開発機能を備えている。まずは人手で行っていた作業をシステム化し、それをRPAでつないで業務プロセスを自動化するといったことが非常に簡単な操作で実行できる。
Point2 ユーザー自身が簡単に設定変更できるかどうか
Point2のユーザー自身が簡単に設定変更できるかどうかについてCELF RPAは、Excelでマクロを作成するときと同じように、操作手順を記録することができる。マウス操作やキーボード入力、ウィンドウ操作、コピー&ペーストなどのクリップボード操作が行え、当然ながらCELF RPA以外のアプリケーション操作にも対応している。たとえ基幹システムなどの更改に伴ってロボットの設定変更が必要になったとしても、現場のユーザー自身がRPAの保守メンテナンスを簡単に行うことができる。
Point3 費用対効果について
Point3の費用対効果に関してもCELFは優れている。RPA機能のオプションの利用料金は、年間わずかPC1台あたり3万8,500円(税込)。日本の平均人件費である年間891万円(厚生労働省の資料による。給与・賞与などの直接人件費だけでなく、間接費、管理費なども含む)のうち、1カ月あたり40分、1日あたり2分以上業務を効率化できれば、投資に見合うということになる。その導入効果は非常に大きく、これなら中堅・中小企業でも手軽に導入できるだろう。
CELFのような費用対効果の高いツールで、身近な業務からすぐに自動化に取り組んでみてはいかがだろうか。